掛け捨て vs 貯蓄型保険:賢い選び方


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掛け捨ての保険と掛け捨てじゃない保険」、つまり「掛け捨て型」と「貯蓄型」のどちらを選ぶべきか、保険選びで迷う方は少なくありません。保険料が安く保障に特化した掛け捨て型と、保険料は高いものの解約返戻金や満期保険金がある貯蓄型では、それぞれメリット・デメリットが大きく異なります。
どちらが良いかは、あなたのライフプラン、経済状況、そして何を重視するかによって変わります。医療保険、死亡保険、学資保険など、多くの保険商品にこの区別があり、最適な選択をするためにはそれぞれの特性を深く理解することが不可欠です。
本記事では、両者の違いを徹底解説し、あなたの目的に合った賢い保険選びのポイントを分かりやすくお伝えします。

掛け捨て保険とは?特徴とメリット・デメリット

掛け捨ての保険」とは、支払った保険料が満期時や解約時に戻ってこない(またはごくわずかしか戻ってこない)タイプの保険を指します。その名の通り、「保険料を掛け捨てて」保障を得ることに特化しています。

  • 特徴:
    • 保険料の安さ: 貯蓄機能がない分、同じ保障内容であれば貯蓄型の保険に比べて保険料が安く設定されています。
    • 保障に特化: 死亡、医療、がんなど、特定の万が一の事態に備える「保障」を最優先する設計です。
    • シンプルさ: 仕組みが比較的シンプルで分かりやすい商品が多いです。
    • 主な種類: 定期保険医療保険(終身型でも解約返戻金がないものも多い)、がん保険収入保障保険などが代表的です。
  • メリット:
    1. 家計負担が少ない: 月々の保険料が安いため、家計を圧迫しにくいのが最大のメリットです。必要な保障を最小限のコストで確保できます。
    2. 必要な時期に手厚い保障: 子育て期間や住宅ローン返済中など、一時的に大きな保障が必要な時期に、効率的に手厚い保障を準備できます。
    3. ライフプランの変化に対応しやすい: 期間が決まっている商品が多く、ライフステージの変化に合わせて、保障内容や保険料を見直しやすいため、柔軟な対応が可能です。不要になったら解約することも比較的容易です。
    4. 保険料を他の投資に回せる: 浮いた保険料を貯蓄や資産運用に充てることで、将来の資産形成をより効率的に進められる可能性があります。
  • デメリット:
    1. 満期返戻金や解約返戻金がない: 貯蓄性がないため、保険期間が満了してもお金は戻ってきません。また、途中で解約しても、ほとんどのケースで解約返戻金はありません。
    2. 「もったいない」と感じる可能性がある: 保険金を受け取らずに保険期間が終了した場合、支払った保険料が「消えてしまった」と感じる人もいるかもしれません。
    3. 保障終了後の選択肢: 期間満了後、保障を継続したい場合は、新たに保険に加入し直す必要があります。その際、年齢が上がっているため、保険料が高くなる可能性があります。

掛け捨て保険は、「もしも」の事態への備えに徹し、無駄を省いて保険料を抑えたいと考える人に適した選択肢と言えます。

掛け捨てじゃない保険(貯蓄型)とは?特徴とメリット・デメリット

掛け捨てじゃない保険」、すなわち貯蓄型の保険とは、支払った保険料の一部が積み立てられ、満期時や解約時に解約返戻金や満期保険金が支払われるタイプの保険です。保障と貯蓄(または資産形成)の二つの機能を持つ点が特徴です。

  • 特徴:
    • 保険料の高さ: 貯蓄機能がある分、同じ保障内容の掛け捨て保険に比べて保険料が高く設定されています。
    • 貯蓄・資産形成機能: 保険期間の満了時や途中で解約した際に、所定の金額が戻ってきます。
    • 強制的な貯蓄: 毎月一定額を支払うことで、半強制的に貯蓄を進められる側面があります。
    • 主な種類: 終身保険養老保険学資保険個人年金保険変額保険などが代表的です。
  • メリット:
    1. 貯蓄・資産形成が可能: 満期保険金や解約返戻金があるため、保障を得ながら将来のための資金を準備できます。
    2. 途中で解約しても一部戻る: 掛け捨て型とは異なり、契約期間中に解約した場合でも、払込期間が長ければ払い込んだ保険料の一部が解約返戻金として戻ってきます。
    3. 税制優遇: 生命保険料控除の対象となるため、所得税や住民税の負担を軽減できる場合があります。
    4. 「もったいない」と感じにくい: 保険金を受け取らずに満期を迎えても、満期保険金としてお金が戻ってくるため、「保険料が無駄になった」と感じにくいでしょう。
    5. 契約者貸付制度: 解約返戻金がある保険の場合、その範囲内で保険会社からお金を借りられる「契約者貸付」を利用できることがあります。
  • デメリット:
    1. 保険料が高い: 掛け捨て型に比べて月々の保険料が高いため、家計を圧迫する可能性があります。
    2. 解約時期によっては元本割れ: 保険加入後、特に短期間で解約すると、解約返戻金が払い込んだ保険料の総額を下回り、元本割れするリスクがあります。
    3. 資金の拘束: 満期まで資金が拘束されるため、急な資金ニーズに対応しにくい場合があります。
    4. インフレリスク: 長期間にわたる契約の場合、将来受け取る満期保険金の価値が、インフレによって実質的に目減りするリスクがあります。
    5. 運用利回りが低い傾向: 一般的に、貯蓄型の保険は貯蓄や資産運用を目的とした他の金融商品(投資信託など)と比べて、運用利回りが低い傾向にあります。

貯蓄型の保険は、保障と同時に将来のための貯蓄も両立させたいと考える人に適していますが、その特性を理解した上で、自身の資金計画と照らし合わせて慎重に検討することが重要です。

目的別:掛け捨て型と貯蓄型の選び方

掛け捨ての保険と掛け捨てじゃない保険」、どちらを選ぶべきかは、あなたの保険に求める目的によって大きく異なります。ここでは、主な目的別にどちらが適しているかを解説します。

  • 1.「万が一」の保障を最小限のコストで確保したい場合:
    • 選択肢: 掛け捨て型の保険(定期保険、収入保障保険、医療保険、がん保険など)
    • 理由: 掛け捨て型は、保障に特化しているため保険料が安く、家計の負担を抑えながら必要な保障を確保できます。特に、子どもが小さい時期や住宅ローン返済中など、特定の期間に大きな死亡保障が必要な場合に、効率的に準備できます。医療費やがん治療費の備えも、掛け捨て型で十分賄えます。
    • 具体的な活用シーン:
      • 子どもの教育費と家族の生活費を確保したい子育て世代
      • 住宅ローン契約者が万が一の場合に備えたい方
      • 病気やケガの医療費、がん治療費に備えたい方
  • 2.将来の資金準備も兼ね備えたい場合:
    • 選択肢: 貯蓄型の保険(終身保険、養老保険、学資保険、個人年金保険など)
    • 理由: 貯蓄型の保険は、保障機能に加え、満期時や解約時にまとまった資金を受け取れるため、将来の教育資金、老後資金、または万が一の死亡保障を兼ねた貯蓄として活用したい場合に適しています。半強制的に積立が行われるため、貯蓄が苦手な方にも向いています。
    • 具体的な活用シーン:
      • 子どもの教育資金を着実に貯めたい方(学資保険)
      • 老後の生活資金を準備したい方(個人年金保険、終身保険)
      • 一生涯の死亡保障を確保しつつ、将来の解約返戻金も期待したい方(終身保険)
      • 資産形成の一部として保険を活用したい方(変額保険など)
  • 3.保障と貯蓄の「ハイブリッド」を求める場合:
    • 選択肢: 掛け捨て型と貯蓄型を組み合わせる
    • 理由: 一つの保険で全てを賄おうとすると、保険料が高くなりすぎたり、どちらかの機能が不十分になったりする可能性があります。そこで、保険の目的を分け、それぞれに最適な商品を選ぶのが賢い方法です。
    • 具体的な活用シーン:
      • 例1:
        • 子どもが小さい間は掛け捨ての定期保険で手厚い死亡保障を確保。
        • 老後の資金は個人年金保険やNISAなどの貯蓄・投資商品で準備。
        • 医療保障は掛け捨ての医療保険でカバー。
      • 例2:
        • 生涯続く葬儀費用などの最低限の保障は終身保険(貯蓄型)で確保。
        • 子どもの教育費は学資保険(貯蓄型)で計画的に貯蓄。
        • 住宅ローン期間中の大きな死亡保障は掛け捨ての収入保障保険でカバー。
    • ポイント: このように組み合わせることで、必要な保障を効率的に準備しつつ、将来の資金計画も着実に進めることが可能です。

最終的な選択は、あなたの現在の経済状況、将来のライフプラン、そして「保険に何を求めるか」という価値観によって決まります。目的に合わせて最適な保険を選ぶことが、後悔しない保険選びの鍵です。

保険選びで重要な「コストパフォーマンス」の視点

掛け捨ての保険と掛け捨てじゃない保険」を選ぶ際、単に保険料の額面だけを見るのではなく、「コストパフォーマンス」の視点を持つことが極めて重要です。支払う保険料に対して、どれだけの保障やリターンが得られるのかを冷静に判断しましょう。

  • 1.保険料と保障のバランスを比較する:
    • 掛け捨て型の場合:
      • 支払う保険料は「保障を得るための費用」と割り切り、その費用に対して得られる保障額が妥当であるかを重視します。
      • 同じ保障内容であれば、より保険料の安い商品を選ぶのが基本的な考え方です。
      • : 月5,000円で20年間、死亡時に3,000万円の保障が得られるなら、その「安心」に対するコストパフォーマンスは良いと言えるでしょう。
    • 貯蓄型の場合:
      • 保険料は「保障を得る費用」と「貯蓄に回る費用」に分かれると捉えます。
      • 支払総額に対して、将来受け取れる満期保険金や解約返戻金がどれくらいになるのか(返戻率)を確認しましょう。
      • ポイント: 返戻率が100%を下回る(元本割れする)期間がどのくらいか、また、満期時の返戻率が他の貯蓄商品と比較して魅力的かを見極める必要があります。
  • 2.「保険」と「貯蓄・投資」を切り離して考える:
    • 混同の危険性: 貯蓄型の保険は「保障もできて貯蓄もできる」という点で魅力的に見えますが、多くの場合、保障機能も貯蓄機能も中途半端になるリスクがあります。
    • 専門化の原則:
      • 保障:掛け捨ての保険で、必要な保障を安価に手厚く確保する。
      • 貯蓄・投資:保険とは別に、NISAやiDeCo、投資信託、銀行預金など、純粋な貯蓄・投資に適した金融商品を活用する。
    • メリット:
      • それぞれに特化した商品を選ぶことで、コストパフォーマンスが向上します。
      • 貯蓄や投資は流動性が高く、必要時に資金を引き出しやすいというメリットがあります。
      • 運用益を追求できる可能性が高まります。
    • 考え方: 保険は「万が一の備え」というコスト、貯蓄・投資は「将来のための資産形成」というリターンと捉え、明確に目的を分けて管理することをおすすめします。
  • 3.インフレリスクも考慮する:
    • 貯蓄型保険の弱点: 長期間にわたって運用される貯蓄型の保険は、将来受け取る満期保険金の額が確定している場合、インフレ(物価上昇)によってそのお金の実質的な価値が目減りするリスクがあります。
    • 対策: インフレに強いとされる株式などの投資商品と組み合わせることで、このリスクをヘッジすることが可能です。
  • 4.ライフプランの変化に柔軟に対応できるか:
    • 掛け捨て型の柔軟性: ライフステージの変化に合わせて、保障額を減らしたり、期間が終了すれば解約したりと、柔軟に対応しやすいのが掛け捨て型のメリットです。
    • 貯蓄型の拘束性: 貯蓄型は、途中で解約すると元本割れのリスクがあるため、急な資金ニーズやライフプランの変更に対応しにくい場合があります。

保険のコストパフォーマンスを考えることは、無駄な保険料を支払うことを避け、より効率的に資産を形成し、安心して生活するための重要な視点です。


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家計とライフプランに合わせた最適な保険選び

掛け捨ての保険と掛け捨てじゃない保険」のどちらを選ぶべきか、そしてどのように組み合わせていくかは、最終的にあなたの家計状況ライフプランに深く根差した判断が必要です。

  • 1.現状の家計状況を把握する:
    • 月々の収入と支出: まずは、現在の収入と固定費(家賃、住宅ローン、通信費など)、変動費(食費、交通費、娯楽費など)を正確に把握しましょう。
    • 貯蓄の余裕: 毎月、いくら貯蓄に回せる余裕があるかを確認します。保険料の支払いは、この貯蓄可能額の中で無理なく継続できる範囲に設定すべきです。
    • 緊急予備資金の有無: 病気や失業など、万が一の事態に備えて、生活費の3ヶ月~半年分程度の緊急予備資金があるか確認しましょう。これが不足している場合は、貯蓄を優先すべきです。
  • 2.将来のライフプランを具体的に描く:
    • 結婚の予定: いつ頃結婚するか、相手の収入状況はどうか。
    • 子どもの有無と人数: 何人の子どもを持ちたいか、何歳頃に独立してほしいか。教育費の希望(公立・私立、大学進学の有無)はどうか。
    • 住宅の購入: 持ち家か賃貸か、住宅ローンを組む予定はあるか。
    • 定年退職と老後: 何歳でリタイアしたいか、老後の生活資金はどれくらい必要か。
    • 介護や医療の備え: 将来、介護が必要になった場合の費用や、大きな病気になった際の医療費への備えをどう考えるか。 これらの具体的なライフイベントを時間軸に沿って描き出すことで、各時期に「どんなリスク」があり、「いくらのお金」が必要になるかが明確になります。
  • 3.保険の優先順位を決定する: 描き出したライフプランと家計状況を照らし合わせ、どのリスクに優先的に備えるべきかを決めます。
    • 高優先度:
      • 死亡保障: 扶養家族がいる場合。特に子どもが幼い時期。
      • 医療保障: 病気やケガによる経済的リスクへの備え。
      • 就業不能保障: 病気やケガで働けなくなった際の収入減への備え。
    • 中・低優先度:
      • 貯蓄目的の保険、資産形成目的の保険など。これらは、高優先度の保障を確保し、かつ家計に余裕がある場合に検討します。
  • 4.組み合わせの最適化:
    • 基本戦略:
      • 大きな保障を安く」必要な時期は、掛け捨て型の保険(定期保険、医療保険など)で手厚くカバーする。
      • 計画的な資金準備」は、保険とは別の金融商品(NISA、iDeCo、預貯金など)を活用する。
    • 例外的な活用:
      • 「貯蓄が苦手で、半強制的に貯めたい」「葬儀費用など、ごく少額の保障を一生涯持ちたい」といった明確な目的がある場合は、貯蓄型の終身保険などを検討する。
      • 子どもの教育費は、学資保険で確実に貯めつつ、一部は教育資金贈与なども活用する。
  • 5.定期的な見直し: ライフプランや家計状況は常に変化するため、保険も定期的(3~5年に一度、またはライフイベントごと)に見直しを行いましょう。
    • 結婚、出産、住宅購入、転職、子どもの独立、定年退職など、人生の大きな節目には必ず見直しのチャンスです。

最終的には、**保険は「安心を買うもの」**であり、家計を圧迫してまで過剰な保障を持つべきではありません。自身のニーズを正確に把握し、保険のプロ(ファイナンシャルプランナーなど)の意見も参考にしながら、あなたにとって最適な「掛け捨て」と「貯蓄型」のバランスを見つけることが、賢い保険選びの結論となるでしょう。

まとめ

掛け捨ての保険と掛け捨てじゃない保険」は、それぞれ異なる特性と役割を持つため、どちらが優れていると一概に言うことはできません。大切なのは、あなたのライフプランや経済状況、そして保険に求める目的に合わせて、最適な選択をすることです。

掛け捨て型の保険は、保険料の安さが最大の魅力であり、万が一の事態に対する「保障」に特化しています。子育て期間や住宅ローン返済中など、特定の期間に大きな保障を効率的かつ安価に準備したい場合に最適です。一方で、満期返戻金や解約返戻金がないため、保険金を受け取らずに満期を迎えると「掛け捨て」となります。

対する貯蓄型の保険は、保険料は高めであるものの、満期返戻金や解約返戻金があり、保障と同時に貯蓄や資産形成の機能も兼ね備えています。将来の教育資金や老後資金を着実に準備したい、半強制的に貯蓄を進めたいと考える場合に有効です。しかし、途中解約での元本割れリスクや、資金の流動性が低い点には注意が必要です。

賢い保険選びのポイントは、まず**「万が一の備え」としての保障を、家計に無理のない範囲で掛け捨て型の保険で確保することです。そして、「将来のための資産形成」**は、保険とは切り離して、NISAやiDeCo、預貯金など、それぞれの目的に特化した金融商品で効率的に進めるという「分離の原則」を検討することをおすすめします。

ご自身の家計状況を正確に把握し、将来の結婚、出産、住宅購入、定年退職といったライフプランを具体的に描くことで、本当に必要な保障額と期間が見えてきます。そして、ライフステージの変化に合わせて、定期的に保険の見直しを行うことが、無駄なく最適な保険を維持するための鍵となります。

保険はあなたの人生を守る大切なツールです。最適な選択をするために、ぜひこの記事を参考に、ご自身のニーズと向き合ってみてください。もし迷うことがあれば、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談し、あなたにとって最適なバランスを見つけることをお勧めします。

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